買うと決めたあなたへ
知りたいノウハウをわかりやすく紹介!
大きなはなし

【提言】中古市場に流通革命を!【木造戸建て築20年で価値なしは本当か?】

革命

こんにちは、まめおです。

平成27年5月26日付で自由民主党住宅土地・都市政策調査会の中古住宅市場活性化小委員会から「中古市場に流通革命を」という中古住宅市場活性化に向けた提言が発表されました。

同委員会は日本の中古住宅市場の活性化を図るための方策を検討する目的で設置され、平成26年6月に第一回会合を開催後、学識経験者・実務家・業界団体などへのヒアリング等をもとに検討を重ねてきた小委員会です。

我が国の中古住宅市場は、木造戸建て住宅が築後20年程度で一律価値がゼロとされるなど中古住宅を適正に評価しない慣行売主・買主間に物件の質に関する情報の非対称性が存在することにより透明性の低い市場になっていること等の課題が提示されています。

【当提言Ⅰ総論(1)「中古住宅市場の現状と大胆な改革の必要性」の冒頭部分】

そして不動産流通市場に横たわる諸課題を抜本的に解決するために、各プレーヤーに対してそれぞれの主体がその役割を適切に果たすよう変革を求めています。

  1. 売主には一層の情報開示売却を見据えた日頃のメンテナンス及びその履歴の保存を!
  2. 買主には自らの目で住宅の質を確認する努力を!
  3. 媒介業者にはより迅速・安全等の顧客ニーズに応えた透明性の高い取引の実現を!

Ⅰ総論(4)小委員会の検討経緯と提言の取りまとめのなかでは、つぎの措置を通じて今後の更なる取組の推進を図るために施策のターゲットを明確にし、重点的な支援を実施する必要性があることから8つの提言をとりまとめたとして総論を結んでいます。

  1. 住宅金融支援機構のフラット35におけるリフォームを含めた中古住宅の取得費用に対する融資の実施措置
  2. 民間金融機関による住宅取得資金にかかるリバースモーゲージ型住宅ローンの供給に対する住宅金融支援機構の住宅融資保険事業による支援等の措置

そしてⅡ各論では8つの提言が示され、その中で中古のおうちに直接関与しているのは下記提言4となっています。

担保評価を含む 「 20年で一律価値ゼロ 」 とみなす市場慣行の抜本的改善

自由民主党とりまとめ「中古市場に流通革命を」提言4 より

今回はこの提言4の内容を紹介するとともに、そのために必要な中古のおうちに関する建物評価の精緻化に向けた取り組みついて見ていきたいと思います。

この記事を読むことによって、建物評価の精緻化にむけた取り組みの内容と、それに伴って実現性が見えてくる金融商品の拡充へとつながる過程をイメージすることができるようになると思います。

提言4の指摘事項

我が国の中古住宅市場においては、税法上の法定耐用年数を不動産取引における建物評価にほぼそのまま使用し、木造戸建て住宅であれば一律に築後20~25年程度で価値ゼロと評価する慣行が存在する。しかしながら、長期優良住宅などの耐久性の高い住宅や、リフォーム等が適切に実施された住宅については、より長期に使用することが可能であり、現に、築後30年以上の住宅が市場において価値を認められて売買される例や、賃貸住宅として活用される例が拡大しているところである。

自由民主党とりまとめ「中古市場に流通革命を」提言4 上段

このため、個別の住宅の質手入れ状況等を踏まえた的確な建物評価がなされるよう、建物評価を専門的に行う不動産鑑定士の評価基準を見直し、その普及を促すとともに、これを金融機関による担保評価にも的確に反映していくなど市場の建物評価慣行を抜本的に改善する必要がある。

自由民主党とりまとめ「中古市場に流通革命を」提言4 中段

ただし、建物評価が改善する一方で、中古住宅に係る社会的負担が急激に増大することとなると、中古住宅市場の活性化を阻害する要因となることが懸念される。このため、市場での建物評価の適正化に連動して社会的負担増を伴うこととならないよう、適切な方策を併せて検討することが必要である。

自由民主党とりまとめ「中古市場に流通革命を」提言4 下段

早急に取り組むべき事項

  1. 不動産鑑定評価手法の一つである原価法などの建物評価ルールについて、中古住宅における部位ごとの単価を把握するなど適切に再調達原価を把握し、建物の性能やリフォーム等の状況を耐用年数に適切に反映するなどの抜本的な見直しを行う。
  2. JAREA HAS(Japan Association of Real Estate Appraisers house appraisal system)を上記見直しに併せて改善し、鑑定評価の現場における活用を推進する。

中期的に実現すべき事項

  1. 金融機関の担保評価においても建物が個別の住宅の性能等に応じて適切に評価されるよう、建物評価ルールの改善の金融市場への定着を図る。
  2. 住宅売却時に住宅ローンに係る残債務が売主に残ることにより円滑な流通の障害となっている実態に鑑み、ノンリコースローンが提供される仕組みの構築に向けて関係者間で検討する。

提言4を受けた鑑定評価の実務面の取り組み

  1. 平成26年の不動産鑑定評価基準の改正で中古のおうちに関連する論点として、建物の価格形成要因の充実が図られました。
  2. 平成27年7月には国土交通省から「既存戸建住宅の評価に関する留意点」の通知がなされ、(公社)日本不動産鑑定士協会連合会(以下、連合会)からは同通知に対応する研究報告が示されています。
  3. 一方、これら既存戸建住宅評価の精緻化の流れを補完するため、連合会は(一財)建設物価調査会と協力して中古のおうちの建物部分についての適正な価格を査定するシステムの開発を行いJAREA-HAS2015として公表しました。
  4. また、連合会は住宅金融支援機構のフラット35の拡充や同機構が民間の金融機関のリバースモーゲージに対して行う融資保険への活用も視野に関係団体との意見交換を行ってきています。

まとめ

いかがでしたか?

今回は引用が多く少し固い内容になってしまい申し訳ありませんでした。

いままで何となく受けいられていた「木造のおうちは築20年経つと価値はなくなる」という思い込みの打破にむけての取り組みが各方面で始まっています。

「木造戸建て築20年で価値なし」という慣習の打破!

提言4〈早急に取り組むべき事項〉を受け、不動産鑑定評価における建物評価の精緻化に真摯に向き合い、一部の不動産鑑定士では「JAREA-HAS2015」というシステムを用いて建物評価を本格的に開始しています。

提言4〈中期的に実現すべき事項〉を受け、金融機関が開発する多様な金融商品への新建物評価ルールの定着が図られるよう働きかけられています。

次の記事からは建物評価の精緻化について具体的に見ていくとともに、今後拡充が見込まれている金融商品においてこの建物評価の精緻化がどのように関連していくかを見ていきたいと思います。