こんんちは、まめおです。
みなさんは「エスクロー」という言葉をご存知でしょうか?
海外の不動産取引に興味・関心のある方ならば「エスクロー」という言葉を耳にしたことがあると思います。
エスクロー制度は契約取引を安全・確実に履行するための仕組みとしてアメリカで考案されたシステムで、同国における不動産取引とくに中古のおうちの取引で頻繁に活用されています。
最近はインターネットオークションなど他の領域における商業取引決済シーンでも採り入れられるケースが増えているほか、日本国内でも住宅の工事代金授受に関し専用の信託口座を設けた「住宅エスクローシステム」が導入されるなどこの仕組みへの関心が高まってきました。
そこでこの記事では近年注目されているエスクロー制度について紹介していきたいと思います。
この記事を読むことによって米国版エスクロー制度を知り、エスクローを利用した場合のメリットなどについてイメージすることができるようになると思います。
エスクロー制度の発展
エスクローの語源
エスクロー(escrow)とは、フランス語の巻物を意味する「escroue」を語源とする言葉で、英国で権利譲渡証書や条件付捺印証書のことを指して使われてきました。
本来のエスクローの仕組み
商取引の際に信頼の置ける中立的立場の第三者を介在させ、関係書類や代金を一時的に預けることでその安全な履行を担保する第三者預託として用いられる仕組みをいいます。
- 中立的立場の第三者が介在
- 安全な履行を担保する第三者預託
米国版エスクローの発展
エスクローの仕組みはアメリカにおける不動産取引の決済保全制度として発展し、西部諸州を中心に法律に基づく制度として根付いていきました。
発祥は1947年のカリフォルニア州といわれています。
米国版エスクロー制度の概要
仕組みのイメージ
不動産の売買にあたり第三者としてエスクロー会社が関与
売主と買主が同意して売買契約書を締結
契約書をエスクロー会社に送付
エスクロー会社は専門の調査会社などに依頼し不動産権原に関する調査を実行
弁護士によって作成された新たな権利書を作成
権利書に売主・買主はそれぞれエスクロー会社を通して署名
取引を進める確認
買主は購入代金をエスクロー会社に預託
入金を確認したエスクロー会社は署名の揃った権利書を登記所に提出
不動産の権利移動を登記
登記済権利書を受理
登記完了後に売主はエスクロー会社から売却利益となる代金の受け取り
買主には権利書や鍵などの引き渡し
取引完了をもってエスクロー会社は所定の手数料を請求
金銭取引の安全性を確保するだけでなく、権利関係の調査から登記までをエスクロー会社が実質的に代行してくれる仕組みになっています。
エスクロー費用
登記変更にかかる手数料や弁護士費用、固定資産税の日割り、ローンがある場合はその日割り利息、不動産仲介業者を利用した場合はその手数料などもエスクロー費用として買主から預かった代金から精算・控除を行ったうえで売主に支払いを行うのが一般的となっています。
エスクロー制度を利用することのメリット
- 専門性の高い分野の各プロセスの進行を全面的にサポートしてもらえます。
- 日本のように不動産仲介業者だけが間に入るのではなく、厳しい許可基準をクリアしたエスクロー会社が入ることで透明性の高い取引が可能となります。
- 不動産仲介業者の両手数料を狙った情報の囲い込みといった悪習を防ぐことができます。
- 建物検査は買主の責任下で自主的に行うものとなりますが、最初の契約後に売主側が行うシロアリ検査や駆除の実施確認・給排水管設備や雨漏りなどの検査・修繕完了の証明書といった住宅の品質にかかるチェックについて、書面としてはエスクロー会社が第三者の立場から実行してくれるなど品質の保証もされやすくなります。
まとめ
いかがでしたか?
この記事では米国版エスクロー制度の内容について見てきました。
日本の場合では不動産仲介業者が売主・買主の両側についている可能性があり、それが明確でないまま取引が進行することがあり得ます。
アメリカの場合は売主側の不動産会社(セラーズエージェント)、買主側の不動産会社(バイヤーズエージェント)がはっきり区分されており、セラーズエージェントは過去の取引記録を確認しながら売主に適正な情報開示書の交付を行わせ、バイヤーズエージェントは買主が有利になるよう保護を行いながら取引のリードを行います。
売主側の不動産会社(セラーズエージェント)、買主側の不動産会社(バイヤーズエージェント)がはっきり区分されている!
そのうえで米国版エスクロー制度は複数の介在者を設けるためそれだけ手数料としての費用が余分に発生する面はあるものの、売主・買主ともに取引中の高水準な保護が図られ、安心・安全が担保されるという大きなメリットをもたらすものとなっています。
エスクロー制度は複数の介在者を設けるため、手数料としての費用が余分に発生する。
日本ではまだまだ広まっていないエスクロー制度ではありますが「日本版エスクロー制度」の確立を目指している業態も出てくるなど、今後もますます注目されていく制度だと思います。
現在の日本の不動産取引では煩雑な手続が必要で、宅建業者を中心に各士業が関わるなど宅建業者にかかる負荷が大きい制度となっています。
そのようななかで、これからは中立的な第三者が複雑多岐にわたる契約・決済までの道筋を整理し、預託制度を利用しながら取引の安全性を高める日本独自の制度が必要になってくると確信しています。
中古のおうちの売買においても、ややコストがかかるかもしれませんが、売り手と買い手が膨大な作業から解放され、「売り手の思い・こだわり」と「買い手の安心」がつながる社会が実現されることを望んでいます。