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【解説】自然災害被災者債務整理ガイドライン【特定調停までの道のり】

債権者 債務者

こんにちは、まめおです。

前回の記事で紹介した「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」ですが、そのメリットは大きくわけて3つありました。

  1. 個人信用情報として登録されないため、新たな借入れに影響が及ばない。
  2. 国の補助により弁護士等の「登録支援専門家」から無料で支援を受けられる。
  3. 財産の一部をローンの支払いに充てずに手元に残すことができる。

今までは「災害救助法」適用下の自然災害の被災者一定の要件を満たせば、少しでも生活や事業を再建しやすく破産等の法的整理によらない債務整理ができる制度でしたが、ここにきてコロナウィルスの影響についても12月から適用できるよう債務整理ガイドラインの改正がすすめられていることがわかりました。

前回の記事では、現行の「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」を利用できる人とメリットを中心に紹介しましたが、今回は手続きを中心に見ていきたいと思います。

この記事を読むことで、現行の「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」の手続について理解でき、今までは自然災害のみであったものにコロナウィルスの影響が加わった時に、何をすればいいのか、どのような手続きをすればいいのかイメージすることができるようになると思います。

手続き1:手続き着手の申し出をする

債務整理の申し出を行おうとする債務者(以下「対象債務者」という。)は、対象債権者のうち元金総額が最大の債権者に対して、本ガイドラインに基づく手続きを着手することを申し出て、同意を取り付ける必要がある

  1. 最も多額のローンを借りている金融機関に対して申し出をする。
  2. 金融機関から同意を取り付ける。
  1. 申し出の際、金融機関より、借入先借入残高年収資産(預金など)の状況について聴取されます。
  2. 可能な範囲で借り入れなどの状況を整理しておきましょう。

手続き2:登録専門家による手続き支援を依頼する

対象債務者は、弁護士公認会計士税理士及び不動産鑑定士の各専門家の各団体を通じて、全銀協に対して、同意書面を添付して、登録支援専門家を委嘱することを依頼する

  1. 地元の弁護士会などを通じて依頼します。
  2. 全銀協は、各団体の推薦を踏まえて登録支援専門家の委嘱を行います。

・債務整理を円滑に実施するための手続きを支援する者として、弁護士、公認会計士、税理士及び不動産鑑定士の各専門家が登録支援専門家として登録されています。

  1. 日本弁護士連合会及び弁護士会
  2. 日本公認会計士協会及び各地域会
  3. 日本税理士会連合会及び各税理士会
  4. (公社)日本不動産鑑定士協会連合会及び各不動産鑑定士協会

手続き3:債務整理開始の申し出をおこなう

対象債務者は、全ての対象債権者に対して、本ガイドラインに基づく債務整理を書面により、同一の日に申し出る

  1. 全ての対象債権者に対して、財産目録債権者一覧表等必要な書類を提出します。
  2. 申し出及び必要書類の提出は、登録支援専門家を経由して行うことができます。
  3. 債務整理の申し出後は、債務の返済や督促は一時停止となります。
  4. 一方で、資産や負債の額を維持する必要があります。

【一時停止】とは

  1. 債務整理開始後、対象債権者間の平等を害する行為を禁止するための措置です。
  2. 対象債務者は、全ての対象債権者の同意なく新たな債務を負担したり、資産を処分したり、一部の対象債権者のみに債務弁済したり、あるいは担保提供をしてはいけません。

手続き4:調停状況案の作成及び提出

対象債権者は、調停条項案を作成のうえ、登録支援専門家を経由して全ての対象債権者に提出する

  1. 登録支援専門家の支援を受けて、調停条項案提出前に対象債権者と事前協議を行い、理解を得るように努めないといけません。
  2. 調停条項案は、破産手続きによる回収の見込みと同等以上の回収を得られる見込みがあるなど、対象債権者にとって経済的な合理性が期待できる内容にしないといけません。
  3. 金融機関からは、1か月以内に、同意するか否かの回答があります。

①非事業主(住宅ローン債務者等)及び②に該当しない個人事業主が作成する調停条項案

  1. 債務の弁済ができなくなった理由
  2. 財産の状況
  3. 債務弁済計画(原則5年以内)
  4. 資産の換価・処分の方針
  5. 対象債権者に対して債務の減免、期限の猶予その他の権利の変更を要請する場合はその内容

②事業から生じる将来の収益による返済により事業の再建・継続を図ろうとする個人事業主が作成する調停条項案

全記①の各事項に加え、事業計画

  1. 事業見通し
  2. 収支計画
  3. 災害発生前から既に事業利益が赤字であったときは、赤字の原因とその解消の方策を記載するとともに、調停成立後おおむね5年以内を目途に黒字に転換する内容を含める

手続き5:特定調停の申し立て

本ガイドラインに基づく債務整理に当たっては、特定調停の手続きを利用する

  1. 対象債務者は、全ての対象債権者から調停条項案に同意あるいは同意の見込みを得る必要があります。
  2. 調停には、原則として、対象債務者自信が参加する必要があります。
  1. 申立費用は対象債務者の負担となります。

手続き6:調停条項の確定

特定調停手続きにより調停条項が確定すれば、債務整理が成立する

  1. 対象債権者から、対象債務者が債務整理を行った事実その他の債務整理に関する情報(代位弁済に関する情報を含む。)について、信用情報登録機関に報告・登録することはありません。
  2. 債務整理の結果として、収入や資産などの状況に応じた一定金額の返済が必要になる場合もあります。

まとめ

債務整理成立例

【設例(自宅が一部損壊の場合)】

  1. 債務総額:2,500万円
  2. 預貯金等の財産:500万円
  3. 自宅(土地建物)の公正価額:300万円

【調停条項】

  1. 公正価額(300万円)を一括で支払い
  2. その余の債務2,200万円(2,500万円-300万円)が免除される
  3. 手元に自宅(土地建物)が残る
  4. 手元に預貯金200万円(500万円-300万円)が残る

調停条項案作成にあたり財産に不動産を含む場合

対象債務者は以下に例示される対象不動産の確定に必要な資料を提供する必要があります。

【①対象不動産が更地の場合】

  1. 対象不動産の場所を示す地図(住宅地図など)
  2. 土地の登記事項証明書
  3. 不動産登記法第14条地図、公図
  4. 土地の固定資産税評価証明書
  5. 罹災証明書
  6. 価格調査の依頼書

【②対象不動産が建物及びその敷地の場合】

①に加えて

  1. 建物の登記事項証明書
  2. 建物の固定資産税評価証明書
  3. 建物図面
  4. 事業用不動産である場合は対象債務者が作成する事業計画
  5. 賃貸用不動産である場合は現在の賃貸借の内容及び費用等がわかる資料

【③対象不動産が区分所有建物及びその敷地の場合】

①に加えて

  1. 建物の登記事項証明書
  2. 建物の固定資産税評価証明書
  3. 建物図面
  4. 管理規約

いかがったでしょうか?

このガイドラインに基づいた債務整理の手続きをとれば、弁護士などの「登録支援専門家」が、債務者及び債権者のいずれにも利害関係をもたない中立かつ公正な立場で本ガイドラインに基づく手続を支援してくれるうえに、債務者の被災状況や生活状況などの個別事情により異なるものの、預貯金などの財産の一部を「自由財産」として残すこともできます。

今秋以降、コロナウィルスの影響で債務返済に支障をきたす方が増えていくかもしれません。

そんな状況が予想されるなか、債務整理ガイドラインにコロナウィルスの影響も加味されることになった場合、このガイドラインを上手く利用して、生活再建の第一歩を歩んでいただければと思います。

なお、今回は現状の「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」の手続きについて説明させて頂きました。

今後の債務整理ガイドライン改正の内容によっては、今までの手続と異なる内容が含まれる可能性があります。

この内容については、詳細が分かり次第、順次紹介していきたいと思います。