こんにちは、まめおです。
今まで住宅履歴情報は不動産取引時に生成される各種の履歴情報(調査書・物件情報など)について、各専門家よりバラバラに納品が行われるため受取側の住宅所有者側で情報が散逸しやすい状況にありました。
- 専門家間で必要とされる情報の共有を行う仕掛けがない。
- メールによる送付など情報の伝達に手間がかかる。
そこでこれまで個別に事業者内で蓄積されてきていた取引時の各種書類等を住宅所有者のために一箇所に集約・蓄積する動きが見られます。
インスペクターによる住宅のコンディション、不動産鑑定士による価格評価、建築士による長期修繕計画といった、専門家(士業)が不動産取引時に必要とされる重要な判断材料、およびその後の住宅所有に必要な維持メンテナンス情報を消費者に提供する取りくみがはじまっています。
①継続的な維持管理の重要性
②次回の売買時における履歴情報の整備の重要性
今回は、専門家間において取引時に各専門家が調査した情報の共有体制や住宅購入者に対して納品時に一元化して提供することで、情報の散逸や書類受け取り時に煩雑な送付作業を効率化すると共に、そのまま住宅履歴システム内に情報が蓄積される仕組みづくりを提案してみたいと思います。
この記事を読むことによって、インスペクションレポートを起点とした事業者間連携による住宅履歴情報プラットフォームの構築と蓄積データの活用の重要性についてイメージすることができるようになると思います。
取りくみのポイント
- インスペクション業者だけでなく、不動産取引に関わる各種の専門家(宅建士・不動産鑑定士・建築士)が連携して成果物納品と共に住宅所有者に対して一連の履歴情報が自動的に蓄積される仕組みづくりを目指す。
- 建物調査(インスペクション)を起点として作成された建物調査レポートをもとに、不動産鑑定士が住宅価格調査書を作成することで連携して売買物件の調査情報を消費者に提供する。
建築士により長期修繕計画書を作成して住宅履歴情報と共に提供することで、住宅購入後の長期保有期間に渡り所有する住宅の維持・管理メンテナンスの意識を高めることを目指す。
従来の住宅履歴情報サービスとの相違点
アップロード時点の相違
従来の住宅履歴情報サービスは取引完了後に納品された履歴情報をアップロードすることで蓄積を行う場合が多いのに対し、本事業においては調査主体となる専門家間が連携を行いながら直接本サービスを通じて情報の共有・納品を行うと同時に情報の蓄積を行う。
情報を紐づける起点
従来の住宅履歴情報システムは所有者を起点として納品された生成レポートのアップロード・蓄積・管理を行うことに対し、本システムは案件発生(調査依頼)時より物件毎に各種の専門家が調査・納品業務をシステムを通じて行うことにより住宅履歴情報を蓄積していくことを目的としている。
住宅履歴情報画面のイメージ
生成された住宅履歴情報は、専門事業者側画面と住宅所有者(消費者)画面の2つの画面を想定している。
専門事業者用画面においては事業者間で謄本をはじめとする物件関連資料、インスペクター・建築士・不動産鑑定士がそれぞれ生成する調査レポートのアップロード・共有(閲覧セキュリティに応じた)が行える仕組みを提案
住宅所有者(消費者)画面においては上述の専門家により提供されたインスペクションレポート等の書類を、自分の物件のカルテとして閲覧することができるとともに、住宅のメンテナンスや増改築に関する情報を各種ニュースソースから閲覧することができる仕組みを提案
お客様の意見
利用した住宅所有者の意見
- 今回のモニターで言葉を聞くまでは意識していなかった。
- 将来売ることを考えるとすれば意識する。
- どんな人が住んでいたのかをはじめ履歴はとても気になる。
履歴が残っていて安心が保証された家は多少割高でも購入を検討したい。
- 専門家による的確なアドバイス(維持管理メンテナンス)が欲しい。
- 信頼できる専門家にアドバイスを受けたり相談できると助かる(例えば家のホームドクターのような存在)。
- メンテナンスが必要な時期が来たら教えてくれると嬉しい(数十年スパンで住んでいると忘れがちなため)。
- 適切なメンテナンスを施し住宅の価値を維持したい。
- 維持管理計画を参考にしつつ、家の使い方により個体差があると思うのでその時の状態にあわせてメンテナンスを行いたい。
- 維持管理計画書にそって住宅をメンテナンスすることで住宅維持を心がけている方が安心感があると思う。
- 維持管理の必要経費があらかじめわかっていれば心づもりができて貯蓄の計画も立てられる。
- マンションの修繕積立金のような考えが住宅でも行えると良い。
- ひとそれぞれだと思う。デジタルに対応できる人にとっては便利だと思う。
- 自分で自らファイルなどをこまめにアップロードするかというと少し疑問に思う(印刷してBOXにいれておくなどが現実的)。
- パソコンはあまりつかわない(スマフォなどが中心)のでファイルを自分でアップロードする感じがしない。
- 利用者自身がファイルをひとつひとつ貯めるのは手間がかかる気がしてあまりやらなくなるかもしれない。
- 専門家へ業務を頼めば自動的に自分の領域にアップロードして保管しておいてくれる仕組みは便利だと思う。
- あれば見るかもしれないが、使うかどうかはわからない(家計簿をつけるように続けられるか不安がある)。
- 電球など消耗品の交換履歴(毎回品番などを調べる手間が省ける)。
- 便利な使い方、家具の置き方等のヒントやアドバイス等家に住んでみてわかる情報(エリアや家の使い方など)、入居前に知っていたら役立つ情報。
- 雨漏りなどのトラブルの履歴。
提供事業者の意見
- 過去の履歴については気にされるお客様は多い。
- 売り主が売りに出した理由を質問されることは多い。
- 新築時の図面を欲しがる顧客が多い傾向にある(将来のリフォームに備えて)。
履歴情報が残った家とそうでない家の価格比較について、同じスペックであれば履歴が残っている物件は多少割高でもお墨付き物件として許容される。履歴情報がある方が売りやすい。
- 設備の故障などで以前の顧客から問い合わせが来ることがある(お客様もどこに聞いてよいかわからないと不動産業者に問い合わせることが多い)。
- 顧客のことを考えるとコンシエルジェ的な相談受付があるとよい。
- 業者としてもお客様へのサービス向上に繋がり、良いと思う。
まとめ
いかがでしたか?
今回は初めての取り組みとして複数専門事業者(建築士・不動産鑑定士・宅建士・インスペクター)間の連携により、不動産取引の過程において成果物の納品をWebサービスを通して消費者に行うことで、自然に住宅履歴が蓄積される仕組みを提案させて頂きました。
【課題】
- 現地調査スケジューリング・担当者調整・住宅所有者(消費者)に対する立会確認などの調整作業については、メールによる業務連絡・エクセルシートの進捗管理がいまだに利用されるなど、このあたりの作業にも、システムによる進捗管理が活用できる可能性があるのではないかと思われます。
- 各事業者により他の事業者に共有可能な書類の種類も個人情報保護の観点よりそれぞれ違い、これらの閲覧セキュリティをより詳細・柔軟に調節できる機能を搭載することでより幅広い種類の情報を取り扱うことが可能となるのではないかと思われます。
事業者間連携の仕組みの構築となりましたが、アンケートを見るに最後は消費者の意識が大事になってくると思います。
消費者に向けては不動産売買時には履歴情報へのアクセス意識は高まるものの、その後の所有の長いサイクルに渡って自身の住宅履歴情報に対する継続的な関心や売買時に作成納品された長期修繕計画書に基づいた適切な維持管理のモチベーション向上をうながす仕掛けなどによる利用促進が必要となってくるのではないでしょうか?