みなさんこんにちは。まめお といいます。
学生のころからなぜか まめお と呼ばれ はや数十年…
私の周囲ではすっかりこの呼び方が定着してしまったので、そのまま使うことにしました。
さて、なぜこのブログを書こうと思ったのか…
それを知ってもらうためには、私のあゆみを振り返るのが一番わかりやすいと思いましたので、少し長くなりますが、みなさんお付き合いください。
① まちをつくりたい!
学生の頃、エジプトとトルコを約一ケ月半かけて旅をしていたとき、
街から街の移動は長距離バスや鉄道が主流で、一旦街を出ると何もない荒野が続きます。一方で街が近づき、遠くから眺めていると一つの街があたかも手のひらにスッポリ収まるような錯覚に捕らわれ、その感覚が毎回楽しみでした。
また、街に入ると生活に必要な施設がコンパクトにまとまっていて、一つ一つの街があたかも独立して存在しているかのような印象を受けたことを憶えています。
この手のひらに収まる錯覚やコンパクトな印象が強かったからでしょうか、旅を続けながら漠然と「まちをつくりたい!」という思いが徐々に募っていきました。
さて、日本でまちをつくる仕事に携わるとすれば建築と土木でしょうか。しかし残念ながら、当時の私は卒業を控える文系の学生で、そちらにシフトしていくためにはすでに遅く、しかたなく文系で不動産に関われる資格を探していたところ、不動産鑑定士という資格に出会い、将来は不動産鑑定士として活躍しながら、まちづくりに関わりたいと強く思うようになりました。
② まわり道?
なぜか公務員
不動産鑑定士になるためには、当時は3次までの試験、2年の実務経験、1年の実務補修、また、不動産鑑定士となってからも地価公示など公的な仕事にたずさわれるようになるまで3年など、かなりの時間と労力が必要でした。
そこで、資格取得と生活の二足のわらじを履くため、ある程度時間の自由があると思われた公務員の道を選んだものの、働きだしたその日から終電がない時間まで残業が続く日々がつづき、見通しの甘さを痛感しました。
ただ、地方銀行の再編、特に戦後初めて破綻した銀行の処理、また国有財産の管理など、民間では得られない貴重な経験を積むことや大きな組織ならではの考え方に触れることができるなど、それはそれで充実した日々を送っていたのではないかと思っています。
そんなある日、異動の打診が…
「 出向5年、本省10年 務めてくるように 」
地方で暮らしている私にとって、いきなり大都会である東京で15年も生活する姿が想像できず、家族と相談のうえやめることを決意し、突然、公務員生活の終わりを迎えることになりました。
今でいう 即独かも
弁護士の業界では、資格取得後、自宅、あるいは小さな事務所を借りて事務員をおかず「即時」「独立」というパターンが増えてきているそうです。
公務員を退官後の私もまさしく即独の状態でした。
公的な仕事をするようになって初めて独立という不動産鑑定士の業界にあって、最初の月間売り上げは2万円、徐々に貯金も少なくなっていき…と、よくある苦労話と同じ道をたどるわけですが、不動産の問題を整理して道筋を示すことを心掛けているうちに、なんとか地域に密着した不動産鑑定士として活動することができたのではないかと思っています。
③ 「売り主の思い」と「買い主の安心」
理想的な住宅取引のしくみ
その後、不動産鑑定+αとして何かできないかと思っていたころ、デザイナーの一人として参加していた中古(既存)住宅の維持向上・評価・流通・金融などの仕組みを一体的に開発・普及させる取り組みが国土交通省の住宅ストック・維持向上促進事業に採択されました。
住宅の資産価値を適正に評価して納得できる取引を実現することで「まち」の活性化に寄与することができるのではないか?
不動産鑑定+αの答えがみつかった瞬間でした。
社会基盤システムをデザインするという発想
中古住宅市場活性化の潤滑油として「売り主の思い」と「買い主の安心」をつなぐ理想的な住宅取引の理想形を作れないだろうか?
そのような思いで数人のデザイナーと仕組みづくりをしていたところ、デザイナーの一人からグッドデザイン賞に応募してみないかと提案がありました。
恥ずかしながらグッドデザイン賞は物に対する優れたデザインを表彰するものと思っていたのですが、「社会基盤システム」という新たなデザインの分野が創設されたということで急いで資料をそろえ応募したところ、
- これまで不動産業界にはなかった仕様書という客観的な評価に基づいた伝達手段を中古住宅に取り入れることによって、情報の見える化となり不透明感が払しょくされる。
- 売り手・買い手の双方にとって不安が軽減し納得感が増すことはもとより、人生設計や生き方の変革にも影響が及び、社会的に有益な取り組みである。
- 分野をまたいだ複数の専門技術によるデータの収集分析のとりまとめ窓口の一本化・表現の統一を的確に行い、利用者にとって伝わりやすい質が実現している。
などの審査員の講評をいただき受賞することができました。
④ それでも~
情報が少なすぎる
グッドデザイン賞は受賞できたものの、徐々に一つの疑問が大きくなってきました。
それは、土地に対して建物に対する情報が余りにも少なすぎるということです。
最近は、インターネットを閲覧すれば土地の相場はだれでも簡単にわかる時代になりました。しかし、建物はどうでしょうか?一つの地域に限ったとしても、築年数・品質・維持管理の状態は一つとして同じものはありません。
そうであればこそ、しっかりと一つ一つの建物に向き合う必要があるのではないか。私自身、そのような思いに至ったときに、建築士が行う建物状況調査(インスペクション)に出会いました。
建築士という建物の専門家が建物状況調査(インスペクション)によって把握した建物のスペック・コンディションを、不動産鑑定士がしっかりと「価格」に置き換えていくことによって、建物に対する情報を少しでも多くのみなさまに提供できるのではないかと考えるようになりました。
いたるところに問題が
しかし、いち不動産鑑定士としてまちの活性化に寄与するため情報を提供し理想形を提案することはできても、実際の流通の場面において力が及ばない局面に何度も直面することがありました。
- 住宅は資産ではなく消耗品
- 日本の住宅取引において中古流通は14%
- 空き家は850万戸 等
このような日本全体の大きなはなしは何度もクローズUPされては放置され、
- 耐震不足
- 断熱・省エネ基準
- そもそも建ててはいけない土地 等
このような個々の家にまつわる小さなはなしはある時は意識されてもいずれ忘れ去られてしまうということが繰り返されてきたと感じています。
それでも希望が!
大きなはなしや小さなはなしについては、それだけを捉えるとなかなか進展が望めません。しかしながら、
- インスペクション
- 瑕疵保険
- シロアリ検査
- 非対面取引
- 民法改正 等
問題が山積するなか、それでも希望が持てる取りくみが出てきたように思えます。
まちをつくりたい!という思いから関わってきた中古住宅市場の活性化ですが、結局、まちをつくることは一人ではできません。
これからは家を買う・家を売るなど、人生の大きな買い物に直面しているみなさんと一緒に大きなはなしについて悩み、小さなはなしについて考え、それでも希望が持てる制度を紹介しながら、このブログを書き進めていきたいと思いいたるようになりました。
みなさんも、もしよろしければ私と一緒に悩み、考えながら、自分の家を取りまく問題に関心を持って頂ければと思います。
⑤ これからの日本のまちづくりはどうあるべきか?
これからのまちづくりには、個々の幸福度は維持しながらささえあって暮らす世のなかであり、上手に縮む勇気と英断が必要だと思っています。
これからはじまる都市のダウンサイジングと集住でささえあって暮らす豊かな都市形成とともに、日本古来の美しい田園風景やまちなみを引き継ぎながら、フレキシブルに移動できる社会が訪れてほしいと願っています。
家を取りまく問題は一見すると個々の所有者の問題と捉えられがちですが、それらを包み込む大きな問題は都市政策であり、人口減少が避けられないなかで我々がどのように暮らしていきたいかという問題でもあります。
これからは「つくっては壊す」社会から「いいものを作って、きちんと手入れし、長く大切に使う」社会への転換が求められているように思います。