こんんちは、まめおです。
日本の住宅ストック総数は約6000万戸を超え、人が居住している住宅ストック総数約5200万戸を大きく上回り、全国の空き家は約820万戸以上にものぼります。
表面化するかたちに違いはありますが、過疎の進む地方のみならず都市圏でも実際に空き家率が上昇してきています。
何も施策を打つことなく放置すれば今後も増加の一途をたどり、空き家は倒壊の危険や犯罪の温床となり、衛生面や景観面でも問題になります。
住宅は基本的に個人の資産ですから、国や自治体が調査や処分にあたるなど勝手に介入することはできません。
だからといって一切対策を講じることなくこの状況を放置すれば、問題はさらに深刻化と拡大の一途をたどり、国民生活の基盤を揺るがすものとなりかねません。
そこで2015年5月には空家等対策の推進に関する特別措置法が施行され、倒壊の危険や景観を著しく損なう空き家について、危険除去などの措置を持ち主に指導・勧告し、従わない場合は最終的に自治体が取り壊しなどを行う行政代執行ができるようになりました。
緊急避難的な対応は一応可能になったものの、空き家が増えないよう根本的な手を打つことが重要であり、この観点からも中古住宅の流通促進が語られています。
今回は空家等対策の推進に関する特別措置法の内容を解説し、各自治体が取れる対応策や先進的な取り組みを紹介したいと思います。
この記事を読むことによって、空き家問題から見えてくる都市形成の問題や人々がどのように暮らしていきたいかを考えるきっかけをイメージすることができるようになると思います。
空家等対策の推進に関する特別措置法(空き家対策特別措置法)について
国は「空家等対策の推進に関する特別措置法(空き家対策特別措置法)」を制定し、2015年2月の一部施行を経て同年5月より完全施行とし具体的な対策を進めてきています。
- 周囲に悪影響を与える危険な状態の空き家を「特定空き家」に指定
- 市区町村から所有者に必要な措置をとるよう指導
- 不十分な対応しかなされない場合には行政代執行法による解体処理などを実行したりすることが可能
- 「特定空き家」に対しては固定資産税の優遇措置を撤廃することも明文化
- 所有者に積極的な空き家の管理や撤去といった行動をとらせることも可能
市区町村による「空家等対策計画」の策定や「法定協議会」の組織化を促す内容も盛り込まれ、全体としてこれまでよりも大きな権限をもった自治体が、それぞれの状況にあった対策を具体的にとれる法的根拠を整えたかたちとなりました。
【法施行から2017年3月末までの累計】
- 「助言・指導」6,405件
- 「勧告」267件
- 「命令」23件
- 「代執行」11件
- 「略式代執行」35件
【空家等対策計画の策定状況:2017年度末】
- 891の市区町村
- 全体の51.2%
先進的な取り組み
①地域の自治会と空き家所有者との相互連絡を促し、管理不全となった空き家が生じないよう自治会による空き家の見守り活動を支援したり自治会による空き家の見回りと市への報告の仕組みを整えた市区町村
②相続人が不明または不存在の老朽化が進んだ空き家については、市が利害関係人となって家庭裁判所へ相続財産管理人の選任申立てを行い、選任された管理人による清算で市税の回収や適切な解体処置などが実行される仕組みを整えた市区町村
③地域団体が主体となった空き家の発生予防や活用などの取り組みを行政としても支援し、専門家の紹介やアドバイスの提供、経費助成などを行う仕組みを整えた市区町村
④空き家を除去した跡地にかかる固定資産税を一定期間減免し所有者の負担を軽減することで、放置された状況の打開を図る仕組みを整えた市区町村
おもてとうら
法律が整備され空き家問題の先進的な取り組みが広がるなかで、国は空き家約820万戸のうち何戸が取り壊し対象で何戸が中古住宅流通促進の対象なのかという垣根が不明で曖昧もしくは判断に迷っている雰囲気がありました。
【空き家820万戸の内訳】
- 賃貸用:約430万戸
- 売却用:約30万戸
- 二次的:約40万戸
- その他:約320万戸
【その他空き家のうち耐震性あり・破損なし】
- 昭和56年以降建築で腐朽・破損なしが約67万戸
- 昭和56年以前建築・耐震性ありで腐朽・破損なしが約36万戸
- 合計約103万戸
【耐震性あり、腐朽破損なし、立地の状況毎に利活用が有望なストック数として駅から1km以内で簡易な手入れにより活用可能なその他空き家】
全国で48万戸
この約48万戸がリフォーム等による性能向上を図りながら利活用の対象となり、それ以外が建て替えや取り壊し後の移転等による対応とすることで、良好な居住環境の形成・コンパクトシティ・小さな拠点の形成や、中古住宅の流通(売買・賃貸)・他用途への転換・適切な維持管理の促進が図られるべきとされています。
まとめ
いかがでしたか?
空き家問題や中古住宅の流通促進に関連し、生涯活躍のまち(日本版CCRC)構想、国土交通省認定中古優良住宅「安心R住宅」、空き家の準公営住宅化、住宅改修減税・譲渡所得3,000万円控除、中古のおうちのインスペクションあっせん義務化等のキーワードが聞かれるようになってきました。
また、都市再生特別措置法等が改正され多極ネットワーク型コンパクトシティ化を目指し、まとまった居住の推進を図るエリア・居住誘導区域を定めることにもなりました。
ここで求められているのは集住政策であり、支え合って暮らす世のなか個々の幸福度は維持しながら、グロスの前年対比に一喜一憂することなく勇気ある行動として思い切った都市形成、上手に縮む勇気と英断です。
そして、これから始まる幸福追求策、都市のダウンサイジングと集住で支えあって暮らす豊かな都市形成とともに日本古来の美しい田園風景や街並みを引継ぎながらフレキシブルに移動できる社会が訪れることではにでしょうか。
空き家問題は一見すると個々の所有者の問題と捉えられがちです。
しかしながら、それらを包み込む大きな問題は都市政策であり、人口減少が避けられないなかで国民が将来どのように暮らしていきたいかという問題でもあります。
これからは「住宅は作っては壊す」社会から「いいものを作って、きちんと手入れし、長く大切に使う」社会への転換が求められていると思います。